カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
エレベーターの中も廊下を歩いてるときも、神宮司さんはひとことも発さなかった。
ピッとカードキーをかざしてドアを開け、私を先に通すと後ろから彼が部屋に入る。
扉が閉まって、カチャッとロックの音がしたと同時に、私は後ろから包まれた。
背が高めの私を、さらに上から覆う感じ。
鎖骨付近に回された腕にそっと右手を添え、振り向く途中で彼の男らしい手が目に入る。
せっかくのイイ部屋も、夜景も私たちには関係なく。
振り返りかけて一度停止したままの、私の顔を覗きこむようにして神宮司さんの唇が重なった。
大きな手で肩を寄せられて、神宮司さんの胸の中からは到底逃げられない。
彼の熱い吐息が少し離れたときに、その手は後頭部へと流れるように移動した。
嫌悪感は感じないし、キスの相性も悪くない。
それなりにドキドキと胸は鳴ってる――――けど。
神宮司さんに触れられている箇所と、頭と心と。
僅かな違和感を感じるのは、なに?
じりじりと神宮司さんに押されて、今や完全に受け身の状態。
キスで攻められ、後退していく足。
太腿にシーツの感触が伝わったとわかった次の瞬間、私の視界はあっという間に天井を仰いでた。
すぐに部屋の天井も遮られるように、神宮司さんがベッドに膝をつく。
「あ……」
覆いかぶされるような状態に、照れなのか焦りなのか……私は思わず目を閉じて顔を横に向けた。
……ああ。こんなことしたら、まるで――。