カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「“無理矢理”、みたいな状況(シチュエーション)だな」
「あっ、ごめ……」
「……初めて見る『美雪』だ」
『美雪』。
そう呼ばれて、ドクン、と大きく脈打った。
その理由が頭に浮かびそうなときに、少し傾けた神宮司さんの顔が目の前に来る。
ごつい指の第一関節が、ネクタイの結び目を緩める。
そのあとは食べられてしまうんじゃないか、と思うほどの強引なキス。
思わず唇を軽く開くと、途端にその隙間から彼の舌が侵していく。
「……ふっ……あ」
あのときと……要とは違う、キス。
まるで私の全てを把握しているかのように、侵入を許した彼の舌に簡単に掴まって。
息が苦しい、ギリギリのところで解放されては、またすぐに塞がれる。
そんな絶妙の繰り返しが、私を中毒にさせていたような……そんな、苦しくてその分とても――甘いキス。
今、しているキスとの違い。
キスの仕方、というよりも、自分の気持ちの違い。
徐々に頭の中が、現実(いま)とは別のところに向かって行ってると感じ始めて、目を瞑ったまま、おもむろにそれぞれの手を、きゅっと握る。
私の微妙な変化を悟ったのか、ギシッと顔の辺りが軋んでいたベッドが戻る感覚に、神宮司さんが距離を取ったことに気付いた。