カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

「……本当に“無理矢理”なら、傷つくだけだから止めるよ」


神宮司さんの言葉に、ぱちっと目を開く。
私を見下ろす目を見ると、神宮司さんの瞳はどこかへとゆっくり動いた。その先を私も追うようにしていく。

辿りついた先は私の左手で。

神宮司さんの苦笑を浮かべたような目の理由がまだわからなくて、恐る恐る上体を起こしながら自分の左手を確認してみた。


「それ……つい最近見たよ、俺」


目で確認する前に、本当はこれがなんなのか薄々気づいてた。


「こういうタイミングでこれを見るなんて、どう考えてもアイツの念としか思えねぇな」


使いこんでて、つるっとした感触の……オレンジブラウンが指の隙間から見える。


本当にまさか、こんなときに、この場所で……。


ベッドで倒れたカバンから零れ落ちていた手帳とボールペン。

要の『念』だなんて思ったりしないけど。
だけど、今このときに私の手におさまるこのペンの意味が、私の心に理由がある気がしてならない。

――――ダメ。


「……やっぱり、私……」


違う。
神宮司さんに対する感じと、アイツに対しての、と。


「きゃっ……」
「――行かせない」


左手のペンに気を取られていると、あっという間に神宮司さんにまた押し倒されて言われる。



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