カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「もし仮に、そうなったとしたら、また私は全力で手に入れにいきますから」
ニコッと笑って言った私に、参ったといわんばかりの顔をして、神宮司さんは覆いかぶさっていた身体を避けた。
ベッドサイドに腰を掛け直して、片手で頬づえをつくようにしながらぼやく。
「あー……怖い。もしそうなったら、仕返しで“振り向いてなんかやるか”って思っても簡単に落とされそうで」
神宮司さん。ありがとうございます。
ここまで追い詰められて、ようやく吹っ切れただなんて。だけど、それも私にとってはきっと無駄なことじゃなかったはず。
神宮司さんにとってはいい迷惑でしかなかったと思うけれど……。
仕事もプライベートも同じ。
自分の目標が明確になった途端、自分のすべき道が見えてきて、それを達成するだけのために手も足も動き出す。
そんなときに見える景色は、とってもクリアで――。
外に一歩足を踏み出して見える景色は、さっきまでの窓の外のような、キラキラとした世界には見えない。
でも、だからこそ、自分が求める光がどこにあるのか。
理性とか、理想とか、体裁とか。そういうの、全部取っ払えるほどの気持ち。
「こんな、ボールペン一本でなんか終わらせないわ」
ホテルを出ても、手にしたままのペンを見て呟くと、顔を上げて一歩踏み出した。