カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

――――要。


ピンときた顔をした私を見た神野さんは、“やっぱり”というような顔をした。


「その人……“営業”って言葉に反応した気がしたので。阿部さんと知り合いなのかなぁって。それなら、あのペン。どうにか手に入るんじゃないのかな? なんて出過ぎた考えが浮かんだんです。でも、他のお客さんについてる間にその人、居なくなっちゃってたので……」


いつもあると思っていたものが、いつもの場所から突然姿を消していたとき。
ましてそれが、必要不可欠な大切なものなら、どんな気持ちになるだろうか。


要にとって、私があのペンと同じ価値だなんて思えはしないけれど……でも。

あの朝、突然隣にいたはずの私が姿を消していて。そして、今日、ライトブルーのペンが消えていた。

そんな類似した出来事が重なって、彼はどれだけの衝撃を受けただろう。


「……心当たりのある人、いるわ」


どうして要が“特殊”な人間だと決めつけていたんだろう。

『……仕事って、やっぱり簡単じゃないよね』。

そう言っていたときの要は、ひどく歪(いびつ)な顔で笑っていた。


アイツだって、同じ血の通った普通の男で。
失敗だってすれば、喜びだってするだろうし、努力だってすれば、傷つきだってする。

勝手に、“大丈夫だろう”と思ってた自分が恥ずかしい。


「そうなんですね。やっぱり」
「神野さん、ありがとう」
「え……」
「私、行くわ」


身勝手な理由で、それを伝えることもせず、傷つけた私は、要に会えるまで探し続けなきゃダメじゃない。
足を止めることなく、要の居る可能性のあるところをしらみつぶしにあたるくらいしなければ。

もっとも、そんなことをしたって、アイツに褒められるなんて保障はどこにもないけど。


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