カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
片方の影が、もう一方の影に触れるように見えた。
胸が張り裂けそうになって、ぎゅ、と目を閉じる。
昨日の子の存在は、忘れてたわけじゃないでしょう? ここで怖気づいてどうするの? 心を決めたんじゃない。
いつでも、どんなときも、自信を持って、強気に。
そんな自分が誇りだし、要もそういう私でいいと言っていた。
彼女(だれ)がいたって構わない。
欲しいものは、自分から手に入れに行かなきゃ。例えそれが、この歳で、とカッコ悪いと言われても。
自身に言い聞かせるようにしてから、ゆっくりと目を開けた。
階段を昇っていくと、まるで想いを告げるまでのカウントダウンのよう。
カバンを逆の肩に掛け直し、インターホンに指を添える。
カバンの中から覗くボールペンを一度見て、ゆっくりとボタンを押した。
ピンポーン、と廊下まで聞こえる音に心臓が騒ぐ。
居るのはわかってる。
さぁ、第一声はなんて言おうか。
扉の向こうに神経を集中させていると、足音も捕らえていないのにガチャリと鍵が開いた。