カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「…………」
「…………」
不思議。
鏡なんかなくっても、私と要は同じ表情をしてる、とわかった。
驚きと、戸惑いと……照れるような嬉しさが入り混じった感じ。
――先手必勝。って、別に勝負なんかじゃなんだけど。
でも、後手にまわるときっとペース乱されて、うまく伝えられないで終わるかもしれないから。
そんな気持ちで、固まったままの要に、先に言葉を投げかけた。
「アンタに関わると、すごい疲れるのよ」
要はドアを半分開けたところで手を止めたまま、目を白黒させる。
「勝手にグイグイ近づいてきて。そうかと思えば、嘘のように大人しくなって。連絡手段もつかない大人なんて、疲れて仕方がないわ」
「……え」
言われるがままだった要は、おもむろに手の中の携帯を確認して呆然としてた。
「本当……すごい、疲れる……」
「ごめ……」
「私の理想を見事にぶち壊す――そんな男をわざわざ選ぶなんて」
もう逃げない。……散々……もう、一生分といえるほど逃げたから。
真っ直ぐに要を見つめると、まるで時間が止まったように、要は微動だにしない。
「……大体察しがつくでしょう? 私の理想なんて。安定した収入と、それなりに整った顔立ちと堅実な性格をして。私(オンナ)を大事にしてくれるなら、パートナーとして合格点」
そういう人を探して、捕まえようとしての繰り返し。
だけど、ステータスが先行して、愛したり愛されたいと願ったりなんてこれっぽっちも頭になかっただなんて、バカよ。
歳上がいい。歳下なんて論外。……そうやって、いつからか生きてきたのに。