カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「悪いけど、私、要が欲しいの」
顔を上げて、一番伝えたかった言葉を口にすると、心臓が飛び出そうなほど緊張してた。
それでも私という人間は、平静を装った顔をする――そんな小さなプライドだけ、必死で守ろうとする。
さっきよりも近い距離にある要の顔は、驚いた顔をしたあとに、不思議そうな表情に変わった。
「……どうして『悪い』?」
「どうして」って……。
「お客さん、いるんじゃないの?」
「え?」
「昨日もいた、親しそうな“彼女”が」
忘れそうだったけど、忘れてない。
今、このアトリエにもうひとつの影を見たこと。昨日、ここに彼女がいたこと。
「だけど、出来うることはやる性質(タチ)よ。本当の私は」
『覚悟して』。そういう意味合いを込めて言う。
本当は、やっぱり若い子には敵う気もしなくて、自分の武器なんて諸刃のものだってわかってるけど。
そうまでして、どうして――――。
「要じゃなきゃダメだって理由、抽象的にしかあげられないのにね」
自嘲するように、髪を掻き上げ呟く。そんな私に、要はぽつりと言った。