カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「……好きになるのに、余計な御託を並べる必要はない、ってわけね」
「インスピレーションとシンパシーってやつ」
「そんなの。到底、人に説明なんか出来ないわ」
「別にいい。誰がわからなくったって、美雪の特別だってこと、オレだけが知ってれば」
繋がれた手で、確かにドキドキと跳ねる心臓。その手をぐいっと引かれ、腰に手を回される。
要の中で見上げると、瞬きする間も与えられぬまま、唇を塞がれた。
ほんの一瞬、触れるだけのキス。
――いまさら、そんなキスで満たされるわけないでしょう?
「――!」
離された距離を埋めるべく、今度は自分から奪いにいく。
一度目よりも長いキスをして、ゆっくり目を開けると驚いた顔で、頬を薄らと赤らめた要がいた。
ちょっとの隙を見た私は火がついて、要の頭に左手を添えると、無防備のままの彼を煽るように口づけた。
「……んッ」
――そう声を漏らしたのは……私。
「そういうキス(コト)すると、どうなるか……美雪ならわかるよね……?」
途端に形勢は逆転。くるりと位置が入れ換わり、デスクの上に押しつけられる。
さらっとした前髪から覗く茶色の瞳。満足そうに口元を緩める、形のいい唇。
右手はずっと、拘束されたまま。
「え、ちょっ……ココ、で……?」
「だって、すごい綺麗」
寝かされたデスクで、カサリと音がしたものに目を向ける。
気付けばデスクにいっぱいのブルー。
「あのペン……もう無くなったから、代わりに似た色で描いてたんだけど」
さっきは、正面に存在感を出してたパネルにしか意識がいかなかった。
「こうして見ると、やっぱり美雪に似合うな」
このラフ画、どれだけの量描いてるの……?!
頭を動かして見えるところまででもかなりの数。動きが制限されてて全部は確認できないけど、想像するには遥かな枚数な気が――……。
「ベビーブルー」
再度要に向き合うと、近づく顔に、もう周りなんて見えない。