カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「あ。照れてる」
思わず、触れられた耳を離して肩を上げてしまった私を、いたずらに笑って言う。
「別に!」
「あー。その顔もコレクションしたい」
「バカばっかりね、要って。大体そんなこと言って、何人コレクションしてんだか」
そうよ。仮に“一番”になれたとしても、二番以降も待機してるなんていつの時代の話よ。
「あれ。美雪が一番知ってるでしょ。オレが“一途”だって」
……はぁ?
なんで私があんたのそんなことまで熟知してるのよ。
むしろ、わからないことだらけで戸惑ってるっていうのに。
情事のあとっていうだけでも落ち着かないのに、場所が場所。
落ち着いて考えもできない私は、間を埋めるように身体を起こす。そして要の手からするりと指を滑らせて、近くにあったブラウスで体を覆った。
顔を逸らした先に、改めて見えるデザインの青。
――――あ。
「オレ、浮気しないけど」
拗ねたように漏らす要を見て笑ってしまった。
「純粋な少年なのか、色気ある男なのか、わかんない人ね」
たった一本のペンを、ここまで愛してくれてるなんて。
その事実は、確かに『一途』で『浮気しない』って説明がつくわ。
「さぁ……。本能のまま、生きてるつもりだけど」
力なく笑って背を向け、要の椅子に掛けてあったジャケットをさらに私にそっと掛けてくれる。
シャツに腕を通しながら、ぽつりと俯いて漏らした。