カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「その想像したこと、もう一回する?」
――――ば! 『バカじゃない!』。
そう口に出せない私の本心は……。
要がゆっくりと近づいて影を落とす。
少し開いた要の唇が、どうしようもなくて、媚薬でも含んでいるかのよう。
その誘惑に完璧負けた――――と、思って目を閉じた瞬間に、要の携帯が音を上げた。
その電子音は、私を冷静にさせるのに充分だ。
「……これ、電話じゃないの? 早く出たら?」
「…………」
しばらく私を見つめ、『出たくない』って顔をするけど、そんなの無視。
さらに、鳴りやまない着信音に諦めたのか、要は盛大な溜め息をついて私から離れる。
こんな時間にでも電話って……クライアントじゃない……?
携帯を手にして、耳にあてた要の横顔に少し動揺する。
それでも、つい数十分前にここで抱かれて、「浮気しない」と言った要のことを信じたいし、なにより揺らがない自分を取り戻したい。
「――嫌がらせか、美央っ」
あまりに簡単に要の口から聞こえてきたその名前。
「何回も言わせるなよ。『タイミング悪い』って!」
ぶつぶつそんな横柄な態度を取りながら、ものの数十秒で電話が終わってしまった。
唖然としながらその状況を目の当たりにして、考える。
「……『美央』って、要の――」