カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「妹。ほら、オレの名前『要』でしょ? 『美央』も“真ん中”とか“中央”とか、いつでも誰かが周りにいてくれるように。そんな由来で決めたとかっていつか聞いたんだけどさ。
あいつ、自分が中心みたいな性格になっちゃってんのって、そのせいじゃないかってときどき思う」
……やっぱり。
自分で自分が情けない。
そんなオチに、まさか自分が引っ掛かるなんて。
「今日だって、前までオレが使ってた部屋にそのまま置いてた作品(これ)を早く撤去しろって急かしてきて……取りに行ったら『ご飯奢れ』だって」
……まぁ、そのくらい『盲目だった』ってことにしておこうかしら。
「通りで」
可愛いはずだわ。要と同じDNA持ってるならね。
「え? なに。それって、オレも自己中とかそういうこと言ってるの?」
「ま、それも否定しないわ」
「……そんなこと言って。“彼女”だと思ってたんでしょ?」
「――そうよ。だから」
ここに来たときにそういうことを示唆した言葉を言ってしまったし、気付かれてないだなんて思ってはいなかったけど、いざ、面と向かって言われると立場がない。
そっぽを向いて、素っ気なく答えかけたら、後ろからきつく抱きしめられた。
「『だから』他の男(ヤツ)のとこ、行きそうになった……?」
ぽつりと肩から漏らす声に、不謹慎だけど、あのとき神宮司さんと関係を持たなくてよかったと心から思う。
私の鎖骨で交差させてる腕に手を添えて、淡々と吐き捨てた。
「あいにく、奪われるより、奪うほうが性に合ってるってわかったから、行くに行けなかったわよ」
肩に乗せられた要の重みが、ふっと軽くなる。
だけど、その腕に拘束されたまま、要の安堵したような笑い声を感じた。