カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「いいんです、営業のままで。私は、具体的誰かのために頑張る方がいいんです。最近そう思ったばかりなので」
照れ隠しで横を向いたままそう告げると、ちらりと横目で見た神宮司さんが意地悪そうに片眉を上げた。
「具体的……って“あいつ”か? まさか阿部まで他の女子と同じくミーハーだったとはなぁ」
「べっ別に、ミーハーとかっ……」
「あまりいじめないでください。そういう役はオレの特権ですからね」
――――なんで! いつもいつも、間が悪いったらないわよ!
背後から聞こえた声に、神宮司さんと私はぴたりと止まる。
振り向くと、いつからいたかわからない、要の姿。
「ったく。なんでここにいるんだよ」
……それは、私も同感。
「えー。呼んだのは神宮司さんでしょ?」
「確かに『都合のいい時間に』って言ったけど、こんな時間に、なんで営業部」
「彼女に一番に見せたかったから……それと、顔、見に」
「彼女」って言葉もだけど、さりげなく「顔見に」とか言わないで欲しい。
いくら晴れて恋人関係になったばかりだからって、なかなか長年浮かれるような性格をしてこなかった私には、どう反応していいか困る。何気に難題なのよ。
……とか余計なことを考えながら、本当は、嬉しいくせに。
にっこりと笑顔を向けられると、何度も見ている顔なのにどうも直視出来ない。
これって、ますます私がこいつを想ってる証拠じゃないの?
なんか、いままでそんなことなかったから、すごく違和感!
「――どうかな」
はらりと見せられたデザインは、やっぱりとても繊細に描かれていて――。