カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「思った以上に、外見シンプルなのね……」
私がぽつりと言ってる間も、神宮司さんは何枚かのデザインをじっと見つめている。
そんな様子にたじろぐことなく、要は流暢に言葉を弾ませる。
ああ。すごく、満足のいくものになったんだ。そういうの、本当子どもみたいに顔に出る。
「うん。こんな言い方したら、誤解されるかもしれないけど……目立つ軸(外見)だけが重要じゃないでしょ」
「だから、芯(中身)?」
「そう。誰も気づかないかもしれない。でも、気付いたときはきっと笑顔になると思って」
デザインは、外観だけじゃなくて、芯の部分まで明細に描かれていて。
その、シンプルな中のこだわりみたいなものが見えて、要らしいな、と思う。
「気付かないわけねぇだろ。書き味抜群の、新インク搭載予定。しかも営業も敏腕。そこウリにしてセールスするって」
「敏腕」って……私のことですか? 神宮司さん。
さりげないけど、そうやって持ち上げられるとやっぱり悪い気分はしない。
そして、要の言葉に冗談混じりでそう言った神宮司さんも、どこか楽しみなように見えるのは私だけじゃないはず。
「外見も大事だけど、中身も大事ってことか……ペンも人も」
要のデザインに視線を落としながら神宮司さんが言うと、要が即座に口を開く。
「オレはラッキーだなぁ。外も中も、両方好きなのが手に入った」
――――は? それ、もしかして私のこと言ってるわけ?!
目を見開いて固まった私を、面白そうに横目で確認した要はくすくすと笑ってる。
ほんっと、小生意気! だけどそんな歯の浮くようなことを言われて、切り返せない自分も自分よ!
わなわなと行き場のない複雑な思いを握りしめてたところを、今度は見下ろすようにして神宮司さんに見られる。
「んなこと言って、また泣かせてみろ。そん時フリ―なら、すぐ行くぞ?」
「神宮司さんの前ではもう泣かないよ」
「あぁ?」
「だって、それもオレの特権だし」
これ、絶対二人して、私の反応見て遊んでるのよね……?
そう認識した私は大きく息を吸った。
「それ以上続けるなら、余所でやって!」