カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
動揺したまま、問われた質問に答えるべく、私はカバンの中の手帳を探る。
「楽しみだなぁ。“オレのため”のペン」
「え」
「だってそうでしょ?」
以前、神宮司さんに見られてた発案の件。
そのまま全部、というわけではもちろんないけれど、あの案をもとに、今回発売される商品は産まれた。
要の好きだった、ライトブルーのダーマトグラフ。
どう頑張っても、それと同じものは復刻することなんて私の力じゃ出来ないから。
『じゃあ』――と、考えてみたものが、予想外にウケがよくて。
単体で手にしてもらうのが難しいなら、“リフィルとして”ならどうか、って。
要(よう)は、ライトブルーは、別売りカラー芯が何種類もある中のひとつ。で、それらを手軽に自分で入れ替えて書けるというペン。
値段も手頃だし、女子中高生向けに――っていうコンセプトになったんだけど。
だけど、そんなふうに公言したことなかったのに。
当たり前のように“伝わってた”ことに、胸が温かくなる。
「……でっでも、廃番(まえ)のとは芯の太さも違うし、軸も違うから書き味は違うと思う……けど」
素直に『ありがとう』とか『うれしい』とか、そういうふうに伝えるのがこそばゆくて。
つい、ツンとした態度で口にしてしまう。
「それでも、そうやって“人のため”って仕事出来る人間が、“彼女”っていうの、自慢だな」
「……影響を受けただけよ」
いつも第一に人のためを考えて接客する神野さんとか、一人でも多くの人の需要が得られるようにって考えてる神宮司さんとか。
自分のカタチが全部――――そういいながらも、やっぱり誰かの“特別”を目指し続けてる要の。
どんな立場でも、“誰かのため”になにかをすることができるはず、と。