カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

「あ、3月20日予定、ね」


手帳を広げて発売日を確認して言った。
手帳を閉じる前に、ペンホルダーに差さっているボールペンをそっと撫でる。

パールホワイトの軸に、銀色のクリップ。
そのクリップの先に、気付くか気付かないかくらい、小さくワンポイントの雪の結晶。

華奢なラインのそのボールペンが、今の私の、特別なペン。


「そんな顔されたら、抱きしめたくなるんだけど」
「!!」


囁くように耳打ちされた私は、思わず手帳を手から滑らせる。それを、要が横から長い手を伸ばして、上手いことキャッチした。

私は赤くなる耳を覆うようにして要を睨む。


「ふ、不意打ちはやめてっていつも……って、ちょっと……!」
「なに?」


「なに?」って、充分理由はわかるでしょうが!


手帳から解放された私の片手を、鮮やかに奪ってするりと指を絡ませる。


「いいからいいから」
「こんな人目に付く中でよくないのよ! 私は!」
「あ、見て。虹」


――いつもそう。
要のペースに掻き乱されて、翻弄される私。


そのおかげで、相変わらず景色が明るく見えすぎて困る。
……『困る』だなんて、ただの惚気ね。


「……虹も、要といたら七色以上に見えちゃう」


どこかで誰かが言ってた。
恋すると、いつもと同じ景色(毎日)が輝いて見えるって。


もっと、ずっと。

一日、一分、一秒ごとに。
繋いだ手から、広がる世界を、あなたと一緒に。







*おわり*


< 206 / 206 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:158

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

姉の身代わりでお見合いしたら、激甘CEOの執着愛に火がつきました
  • 書籍化作品
宇佐木/著

総文字数/127,463

恋愛(オフィスラブ)66ページ

表紙を見る
BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
宇佐木/著

総文字数/111,175

恋愛(純愛)166ページ

表紙を見る
双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
  • 書籍化作品
[原題]二年後の最愛
宇佐木/著

総文字数/114,864

恋愛(純愛)119ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop