カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―


神宮司さんと電話を終えた私は、さっきまでのような軽い足取りではなくなっていた。


「はぁ……」


自然と漏れてしまう溜め息。

なんで私が。なんでこんなところに。ああ、神宮司さんからの電話、気付かなければよかった。そうしたら今頃、社に戻って――もう、スケジュール修正不可能。


肩を落とし、夕陽の色に染まったアスファルトに目を落とす。
自分の影が長く伸びているその先にある建物を見上げて、もう一度息を吐く。
携帯をカバンから取り出して、受信メールボックスを開き、神宮司さんからのメールを確認した。


……ここで間違いなさそうね。それにしても……眩しい。


片眼を細めて手のひらをかざし、再びそのグレーの建物と向き合う。
ほとんどがガラス張りになっているために、夕陽をもろに反射させてるのだ。

入口らしきドアが正面から見て、見つからない。
少し角度をつけて建物に近づくと、3段くらい下る階段の先に、ひっそりとドアが待ち受けていた。


「んっ、重い……」


高さのあるドアを押しあけると、中は太陽の光の力でものすごく暑い。
まるでサウナにでもいるような暑さに、せっかく夕方の風で涼んでいたのに、一気に汗をかきそうになる。


「なに、ここ。変わった造りね……」


入ってすぐに、二手に分かれる階段。その中間にあたる壁に、よく見たら矢印とアルファベット。

左がA、B。右がC、D。
神宮司さんのメールには、【3D】と書いてあった。それを思い出して、私は迷わず右の階段を昇り始める。

段差が高めの階段を昇るには、この高めのヒールじゃちょっと厳しい。しかも手すりというものもない。


でも、『おつかい』はもうすぐそこ。



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