カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
そう思った私は、打ちっぱなしのコンクリの壁に手を添えて、ゆっくり慎重に歩を進める。
一度左に曲がりながら、ようやく辿り着いたら、すぐ目の前が“3D”と書いてある扉が待っていた。
表札とかなにもないけど、メールと一致してると思い、緊張気味にインターホンを鳴らす。
空間が他のビルやマンションと比べて変わってるからか、やけにインターホンの音が響き渡ってドキッとしてしまう。
こだまするようなインターホンの音が、ようやく聞こえなくなったけれど、訪問先の主からの返答がない。
仕方なく、もう一度だけ、と、意味もないのにさっきより強めにインターホンを押した。
「……やっぱり出ない……留守じゃないの?」
物音ひとつしない扉を見て呟いた。
はぁ。完全に無駄足。時間の無駄。帰ろ。
カツッと、廊下に踵を返す音が鳴ったときに、後ろからカチャリという音と共に気配を感じた。
「はい……荷物ですか?」
明らかに寝起きの声で、目をこすり、私の足元から流れるように視線を上げる。
まだ焦点が合っていないような瞳が、私の顔を捕らえた瞬間に光を灯した。