カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「ああ……疲れる」
私、阿部美雪(あべみゆき)が勤めているのは、有名文具メーカー。
そこの営業に携わって早8年。
今年31になった私は、指導係に任命されて4カ月経つ。
もともと、このハッキリとした性格のせいか、あまり人がよりつかない。そんな私にとって、誰かと四六時中いっしょにいて、さらに指導するというのは嬉しい話ではない。
整頓されたデスクの上にあるカレンダーを見る。
あと数カ月もすれば、森尾さんに出来る仕事も増えて、今よりは楽になるだろう。
そんなカウントダウンを心で始めてからも、4カ月経つ。
トンっと軽快な音を立てて、ENTERキーをたたくと、ギッと椅子の背もたれに寄り掛かって伸びをした。
「さ、帰ろ……」
すでに誰もいない部屋で言うと、パソコンの電源を落として席を立った。
いつからだろう。
毎日同じ。朝起きて、通勤ラッシュに揉まれながら出社して。営業で一日中外を歩き回って、夕方までには帰社してデスクワーク。
それが終わると、アフター5をこれから楽しもうとしている人々とすれ違いながら、自宅に帰る。
誰かと飲みに行くとか、ましてデートだとか。
そういうの、気付けば数年ない気がする。
飲みに行っても、お客さんの接待とか、会社の行事だとか。
今日も鳴らないケータイをカバンに押しこんで、靴底の減ったパンプスの疲れた音を鳴らしながら会社をあとにした。