カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「あ。ほんとにエラーになっちゃってたな。神宮司さん、怒ってた?」
「いいえ……ただ、一本『これから送ります』って電話をわざわざくれたのに、いくら待ってもそのメールが来ないことに不思議に思って。折り返し携帯に電話をしたら全く通じない、って心配してたみたい」
「あ。電池切れてる」
「……いまや人気のデザイナーなら、連絡手段のひとつである携帯くらい、ちゃんと充電しておきなさいよ」
腕を組んで要の話を聞いた私は、つい本音を漏らす。
そんな私の言ったことに要は、「気をつけます」と笑って答えた。
素直に謝られると、それ以上なにも言うことはなくて。要がパソコンをいじっている時間をどう過ごしていいかわからない私は、また手前のデスクの上を眺めた。
あれ。紙の下にから少し見えてる方のペンって……。
上に乗った用紙をそっと避けて、ペンを手に取る。
普通の鉛筆よりも少し太めの軸。その軸に刻印されていたのは、予想通り、自社のもの。
「よし! ちゃんと送信されたよ――って、どうかした?」
要の声で驚いた私は、慌てて元の位置にペンを置いた。
「……いえ。じゃあ、私はこれで」
「神宮司さんに頼まれた、って言ってたけど、美雪の彼氏?」
――なにを突然に。詮索されるのって気持ちのいいもんじゃないし、第一、ただの興味本位で聞いているんだろうと思うから余計に腹が立つ。
夕陽を背負って近づいてくる要を、威嚇するように睨んで答えた。
「それが、あなたになにか関係でもある?」
別に『違う』って言ってもよかったかもしれないけど、こいつになんでも情報を曝け出すのもシャクだし。
大体歳上の取引先の女性に、よくそんなことが躊躇いなく聞けるわよね。
沸々と収まらない怒りが、カバンを握る手に力を入れさせる。
そんな私を見て、全くこの心理を汲み取らない要は、明るく笑って言った。