カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
ミントクリーム


久しぶりに眠れなかった。

大抵の問題なら、少し悩んで、すぐに最善策を見出せるけど、今回ばかりはそうはいかなかった。
ブランクがあるせいか、まったく余裕がない。

昨日、神宮寺さんが言ったこと。
“私がいい”、そう言ってた。

バスルームで熱めのシャワーを浴びながら回想する。


喜ぶところじゃない。
そろそろ本当に落ち着くのもいいかもしれない、と思ってたところに再会した彼。

仕事はちゃんとしてるし、顔立ちだって申し分ない。
中身も、一緒に仕事をしてきたから、家族のように知ってる方だと思うし。

浮気の心配は……モテるからゼロではないけれど、ああ見えて仕事に誠実だから、きっとプライベートも大丈夫。
実家は確か、同じ関東圏内。

こんなに条件揃ってて、断る理由なんてないじゃない。


キュッ、とシャワーを止めて、鏡の中の自分を見た。


もう31。
本気で将来考えてるなら、あまりもたもたなんて、してられない。
同期や、後輩ですら、寿退社をしていって、焦ってないなんて言い切ることは出来なくて。

――なのに。

それなのに、なにを迷っているの。


「あいつが余計なことしてくるからよ……」


要を思い出してボソッと言うと、浮かない顔を映す鏡にシャワーをかけた。



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