カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
*
「ありがとうございました。いらっしゃいませ」
私がギィっと渋い音の鳴る扉を開けると、声がした。
扉の間で一人の男性とすれ違うと、ニコリと笑う店員さんと目が合った。
帰り道にある、街から少し外れた静かな路地。
そこに佇む小さな喫茶店に寄るのが、私の息抜きであり、日課のようにもなっている。
こじんまりとした店内には、木のぬくもりが温かいカウンター席。
その5席しかないカウンターの一番端に、私はいつも腰を下ろす。
「コーヒーください」
「はい。いつもありがとうございます」
オレンジ系の柔らかい光に照らされるテーブルに、カバンから出した手帳を置く。
まるでスポットライトのように私の手元を照らす照明は、カウンター席の上に3つほど設置されている。
何気なく、その照らしている箇所を順に追ってみてみる。
隣のスポットライトが焦点をあてていたところに、飲み終わったカップと何かを食した後のお皿。
そして、一本のペンが置かれたままだった。
そのペンはツイスト部分がシルバー色で、木軸は少し赤茶色をしている。
カウンターの上のペンは、まるで展示品のように、オレンジの光を眩しい程に反射させてその存在感を表していた。
「お待たせいたしました」
「あの、あれ。忘れ物じゃないですか?」
いつものコーヒーをにこやかに運んできた店員さんに、私は指をさして言った。
その指の先をたどって見た店員さんは、トレーをカウンターに置くと、ペンを拾い上げた。
あ。座ったまま見たときは気付かなかったけど、あれ、ドイツ製のボールペンだ。
それなりの値段もするボールペンを忘れるなんて、今頃慌ててたりしないかしら。
ペンをじっとみたまま考えていると、店員さんが「教えて下さってありがとうございます」とお辞儀をして、ペンを持って行ってしまった。
私は湯気が立ち上るコーヒーカップを手にして口元に近付けた。
「……いい香り」
仕事後のコーヒーが心安らぐひととき。
カップに口づけるその前に、ひとこと漏らしてほほ笑んだ。
「ありがとうございました。いらっしゃいませ」
私がギィっと渋い音の鳴る扉を開けると、声がした。
扉の間で一人の男性とすれ違うと、ニコリと笑う店員さんと目が合った。
帰り道にある、街から少し外れた静かな路地。
そこに佇む小さな喫茶店に寄るのが、私の息抜きであり、日課のようにもなっている。
こじんまりとした店内には、木のぬくもりが温かいカウンター席。
その5席しかないカウンターの一番端に、私はいつも腰を下ろす。
「コーヒーください」
「はい。いつもありがとうございます」
オレンジ系の柔らかい光に照らされるテーブルに、カバンから出した手帳を置く。
まるでスポットライトのように私の手元を照らす照明は、カウンター席の上に3つほど設置されている。
何気なく、その照らしている箇所を順に追ってみてみる。
隣のスポットライトが焦点をあてていたところに、飲み終わったカップと何かを食した後のお皿。
そして、一本のペンが置かれたままだった。
そのペンはツイスト部分がシルバー色で、木軸は少し赤茶色をしている。
カウンターの上のペンは、まるで展示品のように、オレンジの光を眩しい程に反射させてその存在感を表していた。
「お待たせいたしました」
「あの、あれ。忘れ物じゃないですか?」
いつものコーヒーをにこやかに運んできた店員さんに、私は指をさして言った。
その指の先をたどって見た店員さんは、トレーをカウンターに置くと、ペンを拾い上げた。
あ。座ったまま見たときは気付かなかったけど、あれ、ドイツ製のボールペンだ。
それなりの値段もするボールペンを忘れるなんて、今頃慌ててたりしないかしら。
ペンをじっとみたまま考えていると、店員さんが「教えて下さってありがとうございます」とお辞儀をして、ペンを持って行ってしまった。
私は湯気が立ち上るコーヒーカップを手にして口元に近付けた。
「……いい香り」
仕事後のコーヒーが心安らぐひととき。
カップに口づけるその前に、ひとこと漏らしてほほ笑んだ。