カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

『いやー……実はね。こんな小さな店でもさ、やっぱり近所のじーちゃんばーちゃんが来るんだよ』
「? それは前からだし、いいことじゃないですか?」
『ああ。いや、違うんだ。それはもちろんいいことさ!それで、その年寄りが、思い入れのある品をたまに持ってくるだろ?』


浜さんの話に耳を傾けながら、なんだかイヤな予感がする。
大体、やっぱり私に電話してくること自体、おかしいもの。


私はリラックスしていた姿勢を正して話の続きを聞いた。


『その中のオーシャンの修理品さ。あの子に、持ってって、て何度か言ったりしてたんだけど。今回、結構日にち空いちゃったから送ったんだ。で、送ったから見積もり出してって言ったやつが、到着したかどうかも連絡なくてさ。どーなってるのかなぁ……とね』


……森尾彩名ぁ!

私がいい関係を培ってきた大事なお客さんを、一瞬で無駄にする気⁈
大体口を酸っぱくするほど言ったはずよね⁈

“言われたことは迅速かつ丁寧に、必ず”って。
もちろん理不尽な要求は該当しないとして、今回のことは初歩の初歩よ‼︎


『なんだか言いづらくてねぇ。美雪ちゃんからそれとなくお願い出来るかい? 悪いねぇ』


「悪い」だなんて、浜さんは全然悪くないのに。
むしろ、こっちの落ち度。謝らなければならないのは私の方。

電話口で、ひたすら私が謝罪すると、浜さんは『大丈夫だから』と優しく返してくれて、それが私の心が余計に申し訳なさを助長させた。




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