カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
……また、知らない番号。
神宮寺さんのはあのあと登録したから、神宮寺さんじゃない。
「はい。阿部です」
ボタンを押さずとも、ちょうどこの階に到着したエレベーターのランプを見て、横に避ける。
それと同時に、携帯から相手の声が聞こえた。
『あ、美雪?』
「かなっ……‼」
その鼓膜と心臓とを刺激する声の主に、思わず声を上げる。
さっき開いたエレベーターから降りて来たのは森尾さんで、彼女はちらりと私を見ては、歩く速度を緩めた。
その視線を振り切って、口元を手で隠しながら小声で話す。
「――なんで!」
こんな時間に、私の携帯に!
絶対なんか面倒な展開になるわ!
『え?美雪ともあろう人が忘れた? オレに名刺くれてたでしょ』
「そういう意味じゃないわ。『なんの用?』ってこと。私ヒマじゃないのよ」
『オレも。だから急いで』
はぁ……⁈
全く、毎度毎度、本当にわけのわからないヤツ!
ただでさえ時間も余裕もないときに、『自分時間』を持つ雰囲気の要にイラっとする。
でもそんなんじゃだめだ、と、心で一呼吸置く。