カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
画板越しに私を見つめる瞳が、まるで魔法でも持つように私の動きを制圧する。
怖い、とかじゃない。でも、目に宿る彼の力が私をそうさせていた。
しばらく視線を交錯させて、喉元から声をようやく絞り出す。
「は……? どういう、」
「いてくれるだけでいいんだ」
もう一度同じセリフを、彼特有の柔らかい笑顔でもなく、さっきよりも真剣な顔で言われるとそれ以上なにも言えない。
要の言葉通り、私はただ、意味もわからずにその場にいた。
その間も、彼は黙々とペンを走らせる。
ふ、と、デスク上のペンスタンドに目がいった。
シルバーの至ってシンプルな四角いペンスタンド。その中にほどよい隙間で気持ちよさそうに立てられているペンの中に、この間見たペンを見つけた。
要の邪魔にならないように、そっと音をたてないようにしてそれを手に取る。
……これ。この間の。
ウチのペンがここにあることは、別に不思議なことでもなんでもない。けど、この手にあるペンと同じものが、そのペン立てに3本も入ってる。
しかもカラーはブラックとかレッドとか、そういう一般的なカラーじゃない。
――ライトブルー。
自分の手に取った、使いこまれたライトブルーのペンと、ペン立てでスタンバイしている新しいペンとを交互に見る。
このペンは、特別デザイン用に作られたものでもなんでもない。
だから、ここにあることが不思議に思う。
飽きるほど見て来ている自社のペンを、じっと見ていて、要の視線が私にまた戻っていたことに気がつかなかった。
ただ、ペンを走らせる音が、そういえば途切れている。そう思って顔をあげた。