カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「あ……勝手にごめんなさい。つい……うちの商品だったから」
「それね。愛用してるよ」
「これを?」
「うん。なんで?」
このペンは、『ダーマトグラフ』……。こんなものでデザインしてたりするんだ。
もっとデザイン向けの商品だって、他のメーカーだってあるのに。そう、あのドイツのペンのメーカーがまさにそうじゃない。
やっぱり腑に落ちない私は、手のひらに転がるブルーを見て首を傾げる。
要は笑って立ち上がると、私の手から、鮮やかな色のペンを拾い上げて言った。
「これ、ばーちゃんから譲ってもらったのがきっかけなんだ」
天にかざすようにして、目を細めてそれを見ると、懐かしそうな顔をする。
「おばあさんから?」
「あ、色はこのブルーじゃなく、赤ね。ばーちゃん昔、先生やってたらしくてさ。そのときに採点するのに使ってたんだって」
カララとキャスターを転がして椅子を引き寄せ、逆向きになって跨るように腰を下ろす。
肩肘ついて、そのダーマトグラフを細くて長い指で手にすると、この前喫茶店でやっていたように器用に回す。
「コレさ。面白いよね。芯が減ったら、糸引いて、くるくるっと剥く感じが」
まだ十分に書けるほど芯が出ているそのペンの糸をつまみながら楽しそうに笑う。
その無邪気な笑顔がすごく可愛く見えて、不覚にもまた、要に見入ってしまった。
彼ももうすぐ30になるというのに、まるで少年のような、あどけない笑顔。
純粋さを感じた私は、あまりに自分とは違っている気がして、咄嗟に目を逸らしてしまった。
「……この前の話の理由(ワケ)。気になってたんじゃない? オレがどうして美雪の会社の依頼を迷わず受けたのか」