カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「と、ここまでは論理的な理由」
「……はい?」
「ここからは、阿部と再会してからの直感」
神宮司さんの告白に、私も懸命に頭の中を冷静にして解釈していると、急に今まで仕事で説明をしているかのような口調だった彼の口ぶりが変わった。
「俺、思ったより、阿部に惚れそう」
ほんの少しだけ。
神宮司さんが一瞬目を逸らして照れたような顔で言った。
“あの”神宮司さんが。
営業が天職だったんじゃない? と思えるほど、流暢に、自分の感情を出すことなく話をする人が。
彼女と一緒にいるところも見たことあるけど、そんなふうに照れるような顔を一度だってみたことない。
堂々と、澄ました顔しかしていなかった彼が。
「は、はぁ……?! 可愛らしさのかけらもないのに……」
「可愛いだけの女ならたくさんいるさ。普段クールな中に隠れてる可愛らしさっていうのがいいらしい」
「ら、『らしい』って……」
「今日のエレベーター」
「え?」
「あのとき、今まで見たことない阿部が見れた。ちょっと抜けてて、慌てたり、顔赤くしたりする阿部」
こんなふうに、曝け出すような告白ってされたことあるのだろうか。
「惚れそう」なんて、それに似た言葉を過去に何度か聞いていても、この年齢でこのシチュエーションで聞くのとはわけが違う。
久しぶりに切なく、胸が音を上げて締め付けられる。
同時に、体じゅうが熱くなる。
「それだ」
「……え?」
「きっと、他のヤツは気づかないくらいの変化」
にこりと笑いながら、私の顔を指差した。
神宮寺さんのほのめかした内容にハッとして、手の甲を頬にあてる。