カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―


思ったより……と言えば、神宮司さんは怒るかもしれない。
でも、同じ部署にいた頃は、もうちょっと“悪い”想像してたから。


ワンルームのアパートに帰ると、萌黄色をした布地の二人掛けソファに、ドサっと腰を降ろす。
そして、上半身だけをシートに預けるように横になった。

神宮寺さんのことを思い出していると、足に当たったカバンの感触で別の男を思い出す。


……そうだ。返事、してなかったわ。


むくりと体を起こして、右手でカバンの中から携帯を探り当てる。
真っ黒なディスプレイに目を落とすと、メールボックスなんか開かなくても、一字一句覚えてることに気づかされる。

あんな短文で、しかもすでに決定事項のようなニュアンスで。


「……あんたの中で決まってることなら、私はもうどんな返事をしたって意味ないじゃない」


ボソリと携帯に向かってぼやいても、当然なんの返しもきやしない。


明日、夜8時……か。

別に他の予定があるわけでもない。
予定が入ることも、きっとない。

要の誘いを受ける、明確な理由もないけど、同時に断る理由だってないわけで。


両手で添えた携帯を見つめたまま、ぐらぐらと気持ちが揺れ動く。

もうひとつの選択肢といえば、このメールを無視……なかったことにすること。
でも、きっちりとした性格がこんなとき災いして、必ず返信しなければ気持ちが落ち着かない私。


「……なんて返せばいいか、わかんないわよ」


このメールにも、神宮寺さんにも。

でも、一番わからないのはきっと、自分の気持ち。





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