カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
*
思ったより……と言えば、神宮司さんは怒るかもしれない。
でも、同じ部署にいた頃は、もうちょっと“悪い”想像してたから。
ワンルームのアパートに帰ると、萌黄色をした布地の二人掛けソファに、ドサっと腰を降ろす。
そして、上半身だけをシートに預けるように横になった。
神宮寺さんのことを思い出していると、足に当たったカバンの感触で別の男を思い出す。
……そうだ。返事、してなかったわ。
むくりと体を起こして、右手でカバンの中から携帯を探り当てる。
真っ黒なディスプレイに目を落とすと、メールボックスなんか開かなくても、一字一句覚えてることに気づかされる。
あんな短文で、しかもすでに決定事項のようなニュアンスで。
「……あんたの中で決まってることなら、私はもうどんな返事をしたって意味ないじゃない」
ボソリと携帯に向かってぼやいても、当然なんの返しもきやしない。
明日、夜8時……か。
別に他の予定があるわけでもない。
予定が入ることも、きっとない。
要の誘いを受ける、明確な理由もないけど、同時に断る理由だってないわけで。
両手で添えた携帯を見つめたまま、ぐらぐらと気持ちが揺れ動く。
もうひとつの選択肢といえば、このメールを無視……なかったことにすること。
でも、きっちりとした性格がこんなとき災いして、必ず返信しなければ気持ちが落ち着かない私。
「……なんて返せばいいか、わかんないわよ」
このメールにも、神宮寺さんにも。
でも、一番わからないのはきっと、自分の気持ち。
思ったより……と言えば、神宮司さんは怒るかもしれない。
でも、同じ部署にいた頃は、もうちょっと“悪い”想像してたから。
ワンルームのアパートに帰ると、萌黄色をした布地の二人掛けソファに、ドサっと腰を降ろす。
そして、上半身だけをシートに預けるように横になった。
神宮寺さんのことを思い出していると、足に当たったカバンの感触で別の男を思い出す。
……そうだ。返事、してなかったわ。
むくりと体を起こして、右手でカバンの中から携帯を探り当てる。
真っ黒なディスプレイに目を落とすと、メールボックスなんか開かなくても、一字一句覚えてることに気づかされる。
あんな短文で、しかもすでに決定事項のようなニュアンスで。
「……あんたの中で決まってることなら、私はもうどんな返事をしたって意味ないじゃない」
ボソリと携帯に向かってぼやいても、当然なんの返しもきやしない。
明日、夜8時……か。
別に他の予定があるわけでもない。
予定が入ることも、きっとない。
要の誘いを受ける、明確な理由もないけど、同時に断る理由だってないわけで。
両手で添えた携帯を見つめたまま、ぐらぐらと気持ちが揺れ動く。
もうひとつの選択肢といえば、このメールを無視……なかったことにすること。
でも、きっちりとした性格がこんなとき災いして、必ず返信しなければ気持ちが落ち着かない私。
「……なんて返せばいいか、わかんないわよ」
このメールにも、神宮寺さんにも。
でも、一番わからないのはきっと、自分の気持ち。