カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
正直言って、こういう待遇されるのは、悪い気はしない。
だけど、そう感じてることを全面的に認めてしまったら、自分がどこに行きつくのかが怖くて、まだ完全に認めたくない。
――それでも、要(コイツ)に会うのを拒否しないのは……。
「『バカ』でもいいよ。そんなオレが美雪に必要とされるなら」
――信じたくない。信じたくなかったけど……その言うとおり、今のこの息苦しい場所から要が這いあがる“きっかけ”をくれる気がして。
「……こんな歳上誘わなくても、あなたなら引く手数多(あまた)でしょ」
「オレが誘いたいときに、誘いたい女性(ひと)を誘ったってだけ。仕事と同じで、誰でもいいわけじゃないし。ああ、なに飲む?」
どのくらい先にここにきて飲んでたのか知らないけど、要の手元にはグラスがひとつあった。
もうすぐ無くなりそうなグラスを手にして、私の答えをじっと見つめて要は待つ。
「……同じのでいいわ」
その言葉を受けた要はニコリと笑って、カウンターの男性に合図を送った。
「お待たせ致しました」
要がそれ以上なにも言わずとも、会話が聞かれていたためか、私たちの前にお揃いのタンブラーが置かれる。
透明な液体の中で、氷の下に小さな気泡がはじけていて、くし形に切ったライムがその横に浮かんでいた。
こういう場所(とこ)で飲むのなんて、久しぶり。
雰囲気が違えば、同じ飲み物も違って感じたりするのよね。
出されたグラスに視線を落としながら、そんなことを考える。
ふ、と、顔を上げ、店内をちらりと観察してみた。
――あれ? なんか、この店って……。
180度、くるりと見渡して、終わりには要と目が合った。そして私がぽつりと漏らす。