カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「なんとなく、美雪はオレの仕事、見つけてくれそうと思ったのにな」
少しがっかりするような目の彼を見て、ちくりと胸が痛む。無意識に彼の期待に応えるべく、必死に答えを探しだそうとする頭。
そして、パッと鮮明に思い出された記憶の映像。
「――表の」
そこまで言いかけた私は、『あれだ』とわかると、優越感にも似た喜びが純粋に湧いた。
けど私以上に、色の抜けた髪に綺麗に染まるライトを浴びて、ぱぁっと表情が晴れ渡った顔をしたのは要だった。
「やっぱり気付いてくれた」
天使の輪をつくったその艶やかな髪のせいか――それとも、『天使』のような無垢な笑顔のせいか。
清らかに感じる彼のオーラに、女であるはずの自分なんかよりもずっと綺麗に感じて、目を奪われてしまう。
『綺麗』でいるために、それなりの努力をしてきた私。
それを、いともたやすく――しかも男に越えられてしまうなんて。
純真な要を見てると、ざわざわと、自分の中の黒い感情が再び私を蝕んでいく。
素直で無邪気で曲がってない要と、屈折していて、大人ぶって、ひねくれている私。
こんなことをまた考えたって、なににもならないし、早く抜け出した方がいいに決まっているのに。
だけど、そんな思考とは裏腹に心が勝手に闇に飲みこまれていく。
「きっかけは店の感じが“似てる”ってことだったんだけど、だんだんとマスターにも惹かれてね。それでオレからも『ぜひ』って」
「看板は店の顔。それを手掛けてくれて、わたしももう思い残すことはないなぁ」
「ちょっと、マスター。そこまで歳くってないでしょ」
カウンター越しになつかしむように笑い合う二人をよそに、私は目の前のジントニックを一気に飲み干した。
トンッとタンブラーを元に戻した音を合図に、要と男性がこちらを見る。