カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
……なによ。どうせ『面倒な女』とか思っての溜め息なんでしょう。
自分から誘ったんだから、せいぜい後悔すればいいのよ。
どうせ私なんか……どうせ……。
「どうぞ」
バーテンダーの声と、コトリとお酒が置かれた音がして視線を上げた。
そこには綺麗なカーマイン色をした、オールドパルが私を見ているような感じがした。
しばらく、その深い赤色を見つめていると、要が久方ぶりに口を開いた。
「少しはすっきりした?」
そう言われて驚いた顔を要に向けると、彼は『面倒』だとかそんな顔をせずに穏やかな目で見つめ返していた。
「まさか、今日は初めから――」
私に捌け口を与えるために――――。
そのとき、店の入り口が開き、賑やかな声が背後から飛んできて言葉を止めた。
椅子を少し回転させて、反射的にその賑わう方向を見て息が止まる。
「ここか? 梨木のオススメのお店!」
「へー大人っぽい! なんかドキドキするー」
「3次会なら、こんなこじんまりしたとこがいいだろ?」
再び背を向けてからも、今来たお客の会話にドクドク鳴る心臓をぎゅ、っと抑える。
「いやー。でも、みんなに会うの久しぶりだよねぇ! 梨木が幹事で動いてくれなきゃ、永遠に同窓会なんてないかも」
「毎回おればっかだし、次はお前らの誰かやれよー」