カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
右手を額にあてて、目を閉じる。
すると、突然背中に回された手に、すぐそばの路地に連れられて壁に背をつけられる。
視線を上げると、さっきはまばゆい光を反射させていた明るい要の髪が、ミッドナイトブルーの空の下では、妖艶に靡いていた。
そして、昼とは違った色香のある声で言う。
「前にも言ったハズだけど」
視界に入るのは要の顔だけ。そのくらいの至近距離で、鈍く光る彼の鋭い瞳を見続ける。
ゆっくりとさらにその距離を縮め、鼻先が触れるほどになったときに、曇りのない目で要は二度目の言葉を私にくれた。
「美雪の代わりは誰もいない」
どうしてあなたは、そんなふうに私を必要としてるようなことを言ってくれるの?
そんな疑問は出逢ってからずっとあった。
初めは冗談だと思ったし、強がって、そんな扱いをされても動じないようにしていたけれど……。
つんと鼻の奥が痛みを感じ、目頭が熱くなる。
平気な大人を演じたいけれど、泣き崩れないように堪えるのがやっと。
「過去はどうあれ、今、目の前にいる美雪が全て――だろ?」
片手で私の頭を撫でるようにして、頬を伝ったところでその手が止まった。
そしてもう片方の手も同じように添えて、私の顔を包み込む。
「我慢、するな」
要のひとことひとことに、自身でがんじがらめにしていた心が解かれていく。
両手で顔をそっと持ち上げられると、気付けばそのまま唇を重ねていた。
温かさを感じるのは、触れていた箇所だけじゃなくて、心の奥底まで。