カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
彼が少し嬉しそうに目を細めて、私が添えていた手を手のひらを合わせるようにして重ねる。
そんな表情(かお)と仕草がどうしようもなく愛しく思えてしまって、体の奥が熱くなる。
その手を重ねられると、私は無意識に指を絡ませていた。
「この短い時間でも、美雪が地に足をつけて、人一倍頑張ってきたこと、わかるよ」
……なにを……生意気に。
「けど、あまりにピンと張った糸がすぐに切れちゃいそうで、危なっかしい」
歳下にそんなこと言われるなんて、夢にも思わなかったわよ。
「壊れる前に、そろそろ緩めてみたら?」
大きなお世話よ……。あんたがそんなふうにするから、涙腺まで緩んじゃったみたいじゃない。
――だけど、こうなる相手が、誰でもよかったわけじゃない。
眉間にしわを寄せながら、次々と涙が横に流れていくのを感じた。
絡ませ合っている指に力を込めても、涙を堰き止める機能が決壊した私は泣きやむことが出来ない。
「そうしたら、もっと色彩(せかい)が広がる」
要も同じように手を握り返し、私の乾いた唇を覆った。
短いキスのあと、視線を交錯させてから、今度は長いキス。その間に右手の指を絡ませなおすように握り合う。
細く長い彼の指の節を、キシキシと指から感じ取る。
手のひらが熱い。
熱いのは、手のひらだけじゃなくて、頭からつま先まで。
触れてる神経から感じるもの以外は、もうなにも考えられなくなって、ただ目の前の要に集中していた。
「出来ないなら、手伝ってあげるから」
薄めの唇で降り注がれるくちづけは、あのバーで飲んだお酒よりも酔わされる気がする。
酸欠になりそうな私が薄らと口を開くと、息継ぎよりも先に、要の舌が割り入ってくる。
「――っ……」
呼吸が乱れた私に一拍時間を与えて、また距離をなくすと同時に容易く舌を絡め取られる。
そしてまた、息が苦しくなった頃に解放されて――――。