カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

僅かな瞬間に目を開けると、正面にいるのは目鼻立ちの整った、上半身が露わになってるイイ男。

知っていたはずなのに、色気が加わっている今の要にどうしようもなくドキッとした。
それに比べて、体型や肌の管理には気を遣ってはいるけれど、時間(とし)には逆らえない三十路を過ぎた女。

私の思考なんてお構いなしに、首筋から鎖骨に下り、下着をずらして先端を口に含む。
膨らみを包み込んでいる要の手は、不思議といやらしさを感じさせなかった。


「あ、まり……見ない、で……」


右手は今でも重ねられたままだから、左腕を目元にあてて微かな声を出す。


まさか自分がこんな弱い女だなんて。
幼い頃の経験をバネにしてきた私は、むしろ強くあるはずなのに。

都合良く、手を伸ばせば届く男に抱かれることで、心の隙間を満たそうとするなんて。

だけど、この広い胸の音と、透き通った瞳。そして絡み合う指先が愛しく感じてしまっている。
この瞬間(とき)だけでもいいから、必要とされたい、満たされたい。


ああ。思い出した。
神野さんの言葉――「気持ちは初めから決まってる」。

あの言葉を受け入れてしまえばこんなにラクになるんだ。


「……そのまま自信持ちなよ」
「え……」
「美雪は誰から見ても、強くて綺麗なんだから」


要の滑らかな指先を髪に差し込まれると、彼の瞳に映る自分を見た。
その丸い栗色の目が、優しく光って私の姿を包む。


「ああ。弱ってるのを見せるのはオレの前だけ、ね」


その言葉の本当の意味はわからない。

こんな私の弱ってるところを見て、優越感を感じて優位に立てるのが嬉しいのかもしれない。


それとも、もっと特別ななにかを含んでいたりする――――?




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