カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
数時間前に飲んだお酒と、今、与えられる快感に全部が蕩けてしまって、真意なんてどうでもよくなっていく。
「その可愛い表情(かお)、誰かにみせるのもったいないから」
それって、リップサービスなんでしょう?
だけど吐息混じりで言われた言葉に、キュウっと胸の奥が締めつけられる。
「……大丈夫。そのままの美雪で――」
ああ、もう、バカ。
そんなこと、こういうシチュエーションで言われたら、どんな女でも勘違いするっていうのよ。そしてきっと、高ぶる感情のまま涙するわ。
それをわかってて言ってるの?
「そ、んな……言われた、らッ――あ!」
一定のリズムだった律動が急に速まる。
ぽたっと頬に落ちる雫は、自分のものではないことに気がついて要を見上げる。
あ……要の汗ってカラフル――。
月明かりを受けて白く光ったり、部屋のなかのガラスのオブジェが反射して赤くも碧くも見える。
高みに昇り終えたあと、無造作に髪を掻き上げる要の姿を、朦朧とした意識の中眺めてた。
橈骨(とうこつ)から手の甲にかけてのラインが綺麗。
あの手で、指で、ペンを持っていろいろ生み出してるのね。
「要の……指……」
あの日、ライトの下で見た、その長い指に一目惚れをしたのかもしれない。
「……『指』? 美雪?」
「……」
「……ほんと、寝顔まで美人だな、美雪は」
くすっと笑いながら漏らした要の言葉が耳に届かないうちに、すぅっと眠りに引き込まれてしまった。
ひさしぶりに、穏やかで鮮やかな夢を見て。