カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
『触れたい』とか、そういう感情がまだ残ってる。というより、消えそうもない。
自分の体が重だるくて、私の腰に乗せられた要の腕に今さら気づく。
その腕を、気づかれないようにそっと避けて、静かにベッドを抜け出した。
明るい中で改めて部屋を見てみると、知っている景色と違う。
壁や窓と、静かな雰囲気は、あのアトリエと同じ。
ここはどこ?
要の自宅には間違いないんだろうけど……。
メゾネットのように作られてる部屋は、吹き抜けになっていて、階下が見渡せる。
やっぱり大きな窓がある……と考え、ハッとして足元に視線を向ける。
そこには散乱した衣服が想像どおりにあって、昨夜の情事を物語っていた。
一部始終を覚えているわけじゃないけど、今ここで、少しでも昨日のことを思い出すだけで顔から火が出そう。
慌てて顔を横に振って、急いで身支度を整えた。
そして音を立てないようにカバンを手にして玄関を目で探す。
幸い、珍しいつくりのおかげで玄関は2階にあるのがわかると、足音がなりそうな階段を降りずに済む、と胸を撫で下ろした。
すぐ近くに見つけた玄関に向かおうと一歩足を出そうとしたけれど、背中から聞こえる、スースーと気持ちよさそうな寝息に引きとめられた。
……早く、気づかれないうちに帰らないと。
そう思いつつも、私の足は玄関とは反対の、ベッドに横たわる要のそばへと動いて行く。
さっき見たときと変わらない、男とは思えない綺麗な寝顔。
パラっと落ちた髪を耳に掛けて、上から覗き込む。