カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
要。あなたは、目が覚めて隣にいたはずの私がいなかったらどう思う?
少しは慌てる?
……いえ、そんなふうになるタイプじゃなさそうね。
きっと、昨日は“一時の感情”で抱いてくれたんでしょう?
酔って、壊れかけた私を放っておけなくて。
慰めの一種。私が、人肌が恋しそうだったから。
こんなことになって言うことじゃないかもしれないけど……一応、私は大人だから。
そういうところ、理解出来る方だと思う。
ただ、私のこの気持ちは自分でもかなりの誤算。
なにひとつタイプでもなかったはずなのに、一度体を重ねたことで、執着してしまいそうで怖い。
「……ああ。好みなとこ、あった……」
苦笑しながら、要の指先から腕へと辿って眺める。
いつもは隠れてる腕の筋肉を見て、意外にあることに驚きながらそっと布団を掛け直す。
そうして足早に部屋をあとにした。
廊下に出ると、隣が要のアトリエだということに気がついた。
おそらく二部屋借りて生活しているんだ。
ヒールの音を響かせて、階段を駆けるように降りる。
重いドアを押しあけて外の空気に触れ立ち止まる。そしてすでに高い位置に届きそうな太陽に染まる建物を見上げた。
――こんなこと、初めて。
他人に弱みを見せたことも、それを受け止められたことも。
勢いで一夜を共にしてしまったことも、その相手が得意じゃない歳下だってことも。
後悔は……たぶんしてない。
でも、あまりに今回の相手が掴めなさすぎる。未来(さき)がわからない。
自分の価値がわからなくなって、自信喪失してるときにこんなことになるなんて――。
だからまだ、怖くて聞けなくて……逃げ出した。
あいつの本心――――。
「どうしてここにいるんですか」