私と貴方とあの子と・・・【完】
「あっ!ごめん!私!」
なれなれしく名前を呼んでしまった事態に、慌てて謝る。
「そこはまず『起きてたの?』とか『早く返事してよ』とかじゃないんだ?」
香坂君が指摘するが、全くそんな事は思わなかった私。
むしろ、『郁斗』なんて呼んでしまった自分が恥ずかしくてたまらなかった。
「良いんだよ?郁斗って呼んでくれて。『香坂君』って何だか距離感じるし」
「えっ!でも・・・」
慌てる私を見て香坂君は身体を起こした。
「だめ?名前で呼んでくれないの?」
今度はそんな言い方をする香坂君。
何だか心なしか雰囲気が甘いような気がして、
さっきレポートやってた時までの居心地の良さが無く、ソワソワしてしまう。
「だめとかではなくて・・・」
「うん?」
「私、男子を名前で呼んだ事無かったから・・・」
私の発言に一瞬驚いた顔をした香坂君は、
「じゃあ俺の事名前で呼んでよ。
桃花が名前で呼ぶ男子の第一号になる」
なんて、微笑みながら言う。
それでも煮詰まらない顔をする私。
何故香坂君の名前を呼んでしまったのだろうという後悔に包まれていた。
「ん~じゃあ・・さ。
俺は桃花を『桃』って呼ぶ。だから桃花は俺を『郁』って呼んで」