私と貴方とあの子と・・・【完】
「・・・郁?」
「うん。そう桃」
『郁斗』って言うのには恥ずかしかったのに、
『郁』だと抵抗なく呼べた。
それになんだろう・・・お互いを『郁』『桃』って略して呼ぶ事が何だか二人だけの呼び名みたいで・・・
ああ、これは嬉しいんだなと思った。
私が『郁』と呼べる事も。
郁が『桃』と呼んでくれる事も。
それが特別な気がした。
嬉しいのは『友達』だから?
それとも別の感情から?
私には分からない。
「あっ!桃花~」
静かだった空間に響く女の子の声。
それは私を呼んでいて、パンプスを鳴らしながらこっちへ来た。
「桃花おはよう・・・ってえええええ!
香坂君!?」
私の隣を見て声を張り上げる楓。
「ん?誰?」
目を見開きながら目の前に来た楓に対して、
郁は名前を呼ばれた事に楓を見るが、首を傾げる。
「あっ!知り合いじゃないよ!香坂君大学で有名だから、一方的に知ってるだけ」
ニコッと可愛らしく笑う楓。