私と貴方とあの子と・・・【完】
手を大きく振りながら笑顔で来る彼は、
郁から『竜也』と呼ばれた。
明るい茶色の髪にイキイキとした顔。
人当たりの良さそうな男の子だ。
「おわ!お前朝から可愛い子に囲まれて!ずりいな~」
私たちの座る席まで来た彼は、
私と楓を見るとそのまま楓の隣に座った。
「初めまして~。郁斗の友達の風間 竜也(かざま りゅうや)でーす。
ってあれ?君、新入生代表の挨拶してた子じゃん」
向かいの私にいう風間君。
私は少なからず驚いた顔をしたと思う。
私は、入学式の時に『新入生挨拶』を任され、お決まりの文を皆の前で読んだ。
それだけの事で、しかも一か月以上も過ぎたのに顔を覚えてくれていた彼にビックリした。
「よく顔覚えてるね」
感心したように言えば、
「女の子の顔を覚える記憶力はずば抜けてるからね!」
と自信満々に言った。
胸を張って言ったが、あまり『凄いな』と感心できないでいる自分が居た。
「えっとー、鮎川桃花です」
取りあえず自己紹介をした私に、
「風間君変な人~。私は藤野楓だよ!よろしくね」
と元気に言う楓。
「よろしくよろしく!
ところでさ。郁斗今日暇?俺暇なんだよね!」