私と貴方とあの子と・・・【完】



自分の醜さが嫌だ。

楓は私の事友達だと信頼して『郁が好き』と教えてくれたのに、
そんな友達に酷い事を思ってしまった。

楓に『協力するよ』とも言えなかったのに、その上好きになってしまうなんて最悪だ。



そんな私の気持ちには気づかない楓は、

郁とどうやったら仲良くなれるか考えているようだ。




「・・・ねえ、桃花。戻ったら席交換してくれる?
今度こそ香坂君の隣座って頑張ってみる!」

楓の健気な一言に心が崩れた。




ああ・・・本来なら私が協力してあげなきゃなのに、
楓はこうやって自分で行動して頑張ろうとしている。


何やってるの私は。
友達の好きな人好きになって。



「うん。頑張って」
喉を通して苦し紛れの一言。








団体の部屋へ戻ると、前に居た楓はサッとさっきまで私が座っていた席に座った。


私は、楓の近くに置いてあるバッグをさり気なく持つと、
目立たない様に風間君のところへ行く。



「風間君」


「ん~桃花ちゃんどした~?」


後ろから話しかけた私に反応して振り返った風間君に、私は顔を寄せる。

「ごめん。そろそろ帰らなきゃなんだ」

この雰囲気を壊さないように小さい声でそう言えば、

日頃から途中で帰る人が珍しくないようで『おーそっかそっか。了解デース』なんて、慣れたように言われた。

「お金は楓に渡してあるから」

そう言って静かに部屋を出る。


生憎、皆話に夢中なようで私に気づく人は居なかった。







 
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