私と貴方とあの子と・・・【完】
講義中なので、あまり大きな声も出せず、
しかも久々に会った相手になんて言っていいのかわからない。
向こうも話しかけてこないので、そのまま目線を教授に戻す。
教授が時々面白い事言っているのに笑えない。
でも、この居心地久しぶりだ。
何も話さなくても郁が隣に居るという空気が良い。
暫くすると郁は、私が机に出していたペンケースからシャーペンを一本出すと、
私のノートを奪う。
何をするのかと思って郁を見れば、
こっちをまっすぐ見て、
蕩けるような甘い顔で微笑むと、
シャーペンをノートに走らせる。
書き終わったらしく、さっと私に返されたノートの中央には、
郁の男っぽい字で・・・・・
――――――
会いたかった。
一年前から郁は桃が好きです。
――――――
そんな文章。
冗談かと思ったが、郁の顔が凄く真剣で・・・私をジッと見ていて・・・