私と貴方とあの子と・・・【完】
去年のこの時期、梅雨が明けて直ぐにバスケの夏の大会があった。
沢山の学校が大きな体育館に集まって、
汗を掻きながらボールを追う。
私の学校は弱いチームだったから、一回戦で負けてしまった。
後輩たちは今後の為にも、他の試合を見て勉強しているが、
早々と引退が決まった私達3年は、少しでも大会の雰囲気を味わいたくて、自主的にお手伝いをしていた。
私が救護室に氷を運びに行くと、中に居た先生が慌ただしくしていた。
「調度良かった!鮎川さん、ちょっとここに居てくれる?
今試合中の子で足痛めた子が居たみたいでね、行かなきゃなの」
先生に言われて『あっはい』なんて答えれば、
ベッドを指さした先生。
「さっき、試合で他の子とぶつかってね、そのまま床に頭打っちゃったみたいなの。
軽い脳震盪起こしてるみたいだから安静にしてもらうんだけど、頭に氷当ててあげてくれる?」
ベッドで横になっているのは、ユニホームを来た男子だ。
私は急いで袋に氷と水と塩を入れて、
タオルで軽く覆った。
そして男の子に近づく。
目を瞑っている男の子は、綺麗な顔立ちの子だ。
私の気配に気づいたのか、男の子が目を開ける。
「あっ・・・どこ頭打ったの?」
一応声を掛けてみれば、
頭部の横側を指さす。
後ろなら分かるが、横側を床に打ちつけるなんて、どんだけ激しく試合してたんだろうか・・・
そんな疑問を持ちながらも髪の毛を除けて頭皮を見る。
そこは大きく膨らんでいて、
自分が打ち付けた訳じゃないのに、痛さが電線しそうだった。
「こんなにこぶ出来て・・・痛いでしょ?今冷やすからね」
そっと、頭に氷を当てる私を男の子はジッと見てきた。
「ありがと」