私と貴方とあの子と・・・【完】
私の言葉を聞いた郁は、
今度はあっさりと身体を離す。
というより、起き上がってベッドに座り私の顔を見た。
目が合った郁の顔は驚いていた。
「本当?」
信じられないのか聞き直す郁に、
私も起き上がり、ベッドの上に座った。
郁とベッドの上で向かい合う形になる。
「去年の脳震盪・・・忘れててごめんね」
それを口にすれば、郁は見る見る内に赤くなって、
顔を腕で隠す。
「思い出さなくて良いのに」
私はそこでフッと思い出す。
「あの時の女の子、どうしたの?」
あそこに来たって事は、郁の彼女だったんじゃないだろうか。
「ああ、うん・・・あの時は若い盛りで、適当に告白してくれた子と付き合ってたから・・・」
つまり好きではない子と付き合ってたという事だろうか?
「でもさ。あの日、桃を知って・・気遣って心配してくれる優しさとか、同じ空間で凄く居心地良かった事とか知って、
桃に惹かれたんだ。
その後、肩書だけの彼女が来て、自分をアピールする事しか考えてないそいつ見たら、『俺、なにやってんだろう』って思った。
ちゃんと、桃みたいな居心地のいい子を見つけたいと思って直ぐ別れて・・・
入学式でまた桃を見つけて『神様は、桃にまた話しかけるチャンスをくれたんだ』と思った。
偶然見つけた桃を追って、知らない講義に参加して桃の隣に座って。
隣に居たら居るほど、『桃じゃないとダメだ』って思い知った。
桃・・・・