私と貴方とあの子と・・・【完】
「教科書とノート忘れたんでしょ?教科書見ていいよ。これ使って」
私があまりにも集中していたから話しかけるにも掛けられなかったのだろう。
申し訳なく思いながら彼を見ると、
彼は困った顔から、一瞬驚いて・・・
かと思えば、ふわりと柔らかく笑った。
・・・太陽みたいに温かい笑顔・・・。
「やっぱり優しいね。鮎川さん」
しみじみと…という風に小さな声で言う彼に、
私は頭の中でクエスチョンマークを浮かべた。
彼の言い方だと、私を知っている風だ。
現に彼は私のみよじを知っていた。
しかしだ。
私は講義で彼の隣になった時も、大学で彼と話した覚えもないのだ。
どこかで彼と会った時があるのだろうか・・・?
「あの、どこかで話したことあったっけ?」
彼との事を思い出せずに正直に聞けば、
彼は一瞬寂しそうな顔をした。
「多分、鮎川さんは覚えてないから・・・」
・・・・・・え?
困惑の顔を見せれば、彼は笑った。