私と貴方とあの子と・・・【完】
「あっ、もしもし?桃花ちゃん?」
『桃花ちゃん』を口に出せば、郁斗は直ぐに反応して顔を上げる。
「今日居ないからどうしたのかなって思って」
そう続ければ、郁斗がジッと俺を睨んだ。
『さっき言っただろ?』って言いたそうだ・・・
桃花ちゃんの方は無言になる。
でも、奥の方で『チン!』と何かが鳴って、ガタガタと雑音が聞こえた。
「昨日さ、郁斗からプレゼント貰ったんだよね・・・」
雑音が俺に聞こえたのがわかったのか、桃花ちゃんは話始めたので、俺もところどころ『うん』と頷きながら話を聞いた。
「私、彼氏とか初めてだからプレゼントとか奢りとかどうしたら良いかよく分からなくて・・・
でも、昨日郁から貰ったネックレス凄く嬉しかったんだ。
凄く凄く嬉しかったけど、郁にお金払わせて・・・私郁の荷物になってないかなって・・・
昨日ネックレスの値段払おうと思ったのに全く受け取ってもらえなくて、
どうしたら良いのか考えて、今ね・・・クッキー作ってるの。
こんな安物だけど、それでも私が出来るお礼したいから今日の午前中は学校行かないでクッキー作りしてる」
ああ・・・なんだ。
後で桃花ちゃんに言ってあげよう。
男が彼女にプレゼントをしたい原理を・・・。
そして、今桃花ちゃんが悩んでいることの答えを・・・。
桃花ちゃんと電話を切った俺は、目の前の男を見る。
午前中このままであろうこいつが、午後には桃花ちゃんのクッキーでどのくらい機嫌が良くなるのだろうか?
桃花ちゃんが今自分の為に家で頑張っていると知ったら、
郁斗はどれだけ喜ぶだろうか。