私と貴方とあの子と・・・【完】
「そんな顔しないで。俺のとってはこうやって鮎川さんの目に俺が映ってる事が嬉しいから」
そんな風に言われても気になる。
相手が知っていてこっちが知らないなんて、相手に失礼だ。
私が唸りながら考えていると・・・
「その時の俺はかっこ悪いところ鮎川さんに見せちゃったし、
思い出すよりもこれからの俺を知って欲しいな」
乙女ならばときめく一言も、
私へ気を使っての一言だと思えば申し訳なくなる。
と・・・タイミングが悪いのか
『今日はここまで』とマイク越しに言う教授の声と、皆が動く音。
私はハッと黒板を見て、追加された内容をノートに記入する。
すると、ノートを取ってなかったはずの彼も立ち上がった。
「あれ?ノートは?」
私が聞けば、
「俺、この講義取ってないから」
とばっさりと言い捨てた一言。
『じゃあ何で?』と顔で問えば、
「今日は、鮎川さんに話しかけるために来たんだ」と・・・
「えっ!?えっ!?」
彼の言葉に慌てていれば、
「俺の名前、香坂 郁斗(こうさか いくと)
また声かけるから。じゃあね、桃花」
名前を言い残していくと颯爽と出ていってしまった香坂郁斗君。
しかも『桃花』って。