乱華~羽をくれた君~Ⅱ【完】
周囲に通行人が少しずつ集まり始め、みんな興味津々といった顔で、三人を見ていた。
「なんかやべーなあの客…」
康大も固唾を呑んで見つめている。
客が陸さんの横にいた美優さんに殴りかかろうとしたとき、陸さんがそれを阻止した。
そして客の胸倉を掴んで、今にも殴りかかりそうな勢いで怒鳴っている。
あたしの手には汗がにじんでいた。
こんな陸さんを見るのは久しぶりだったから。
族を引退してから、あまりこういう場面を見ることはなくなっていた。
それも、他の女の人のためだと思うと、胸が苦しくなった。
店の中から数人のスタッフが出てきて、なんとか事なきを得たけど、あたしの心臓は早まったまま。
周りの野次馬がいなくなり、その場に陸さんと美優さんだけが残された。