乱華~羽をくれた君~Ⅱ【完】
罠―side 陸―
―――side 陸―――
まさか奈緒が別れたいって思ってたなんてな。
確かに最近俺の前であんま笑わなくなった。
なのに、あのヤローの前では満面の笑顔見せやがって。
イライラが収まらなくて、コンクリートの壁を思いっきり殴った。
この胸糞悪い気分のおかげで、拳の痛みなんか全然感じなかった。
アパートの近くまで行くと、背後から声を掛けられた。
「ぅおおおい!陸!」
振り返ると、そこには広樹が立っていた。
広樹とは中学からの付き合いで、今も時々つるんでいる。
「あ?何しに来た?」
「何しに来たじゃねーよ!何回も携帯鳴らしてんのに!」
確かにさっきから電話が鳴っていたが、イラついて誰とも話す気になれなかった。
「あー…わりぃな」