乱華~羽をくれた君~Ⅱ【完】
奈緒には居酒屋とか言ってごまかすしかないな。
「良かった。店も忙しくてちょうどスタッフ募集してたの。さっそく明日の夜に来てほしいんだけど」
「わかった」
美優は穏やかな表情に戻っていて、まるで愛しい人を見つめる様な瞳で見てくる。
「じゃ…帰るから」
そう言って俺が立ち上がろうとしたとき、美優が言った。
「本当は…陸に会えて、こうやって話ができてすごく嬉しかったの。今日はありがとう…」
それに対して俺は頷き、席を立った。
あいつと別れてから、あいつがどんな想いで暮らしてきたかなんて、想像もしてなかった。
というか、美優の事なんて、頭の片隅にもなかった。
ホント俺ってひどいやつだな…
仕事を引き受けたのは美優のためでもあったが、奈緒のためでもあった。
それで奈緒に黙っててくれんのなら。
あいつを傷つけなくてもすむのなら。
俺はなんだってできるのかもしれない。